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# ユー・ハック・マイ・ゴースト

## 著者
ニナ・クロイツ

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## 第1章：バズの裏に潜むバグ

「お願いだから死んで。そしたら一生、あたしのハードディスクに保存してあげるから」

視界の真ん中で、ネオンピンクのセーラー服を着た少女のARホログラムが、満面の笑みでとんでもない暴言を吐いていた。
彼女の背中からは、ノイズで激しくブレるデジタルな半透明の羽が四枚、生々しく羽ばたいている。

「死ねるかよ！ 俺はまだ、登録者数一万人にも達してない底辺配信者なんだぞ！」

俺――アキトは、ネオ・シブヤの裏路地、ジャンクパーツの隙間に身を隠しながら叫んだ。
脳内インプラント『シンク』の視界には、現在のアカウントの同調者数（同接数）が赤字で点滅している。

『同接数：4,800人』

底辺の俺にしては異常な数字だ。それもそのはず、俺は今、ストリートで噂の都市伝説『電脳幽霊（ゴースト）の少女』に脳をダイレクトハックされ、リアルタイムで命を削られている様子を全世界に生配信中なのだから。

「えー、ケチ。人間の魂って、すっごく上質なソースコードなのに。あ、自己紹介が遅れました。あたしはシロ。ネットの海のゴミ溜めで生まれた、寂しがり屋のネット怪異だよ」

シロと名乗ったホログラムの少女は、俺の視界の中をぷかぷかと浮きながら、あざとく首を傾げた。
可愛い。めちゃくちゃ可愛い。だが、彼女がウインクするたびに、俺の右目に埋め込まれた『シンク』の視覚チップからジリジリとプラスチックが焦げるような異臭がして、脳髄が激痛を訴える。

こいつは本物のバグだ。ネットに漂う死者の未練やストリートの悪意を喰って肥大化した、デジタル・オカルト。気に入った人間の脳をハッキングして焼き切り、その記憶のログを自分のデータとして取り込む、正真正銘の怪物（モンスター）だった。

『配信コメント：おいマジかよこれ仕込みじゃないだろ！？』
『配信コメント：アキトの目がガチで血走ってるぞｗｗｗ』
『配信コメント：バズりのために命捨てるタイプか？ 推せる』

視界の隅で跳ね上がるコメント。承認欲求のチップが脳内でパチパチとはじける。痛い、だけど、ずっと誰にも見向きもされなかった俺の配信が、今、この瞬間、シブヤ中のストリートをハックしている。

「ねえアキト。あんたの脳、すっごく心地いいノイズが鳴ってる。あたし、もうこれなしじゃ生きていけないかも」
「ストーカーまがいの告白すんな！ 脳の同期を切れ！」
「やだ。あたしとあんたは、もう一本のコードで結ばれちゃったんだから」

シロはクスクスと笑い、俺の視界のシステムメニューを次々とネオンピンクのバグカラーで塗り潰していく。
ログアウトボタンが、消えた。


## 第2章：怪異ハッカーのドタバタな日常

それから三日間、俺の人生は完全にバグり散らかしていた。

シロは俺の『シンク』に常駐し、24時間体制で俺の視界をジャックした。
飯を食おうとすれば「あ、その合成プロテイン、あたしの嫌いなデータ構造してる」と言って視覚を反転させて吐かせようとするし、ストリートのジャンク屋でバイトをしていれば、勝手に店内の自動販売機をハックして炭酸飲料を大噴射させる。

「おいシロ！ いい加減にしろ！ クビになったらどうすんだ！」
「いいじゃん、配信の同接増えたんだから。ほら、今日の夜の配信の企画、あたしがもう仕込んどいたよ？」
「は？ 何したんだお前」

シロがドヤ顔で俺の視界に表示したARのスケジュール帳を見て、俺は冷や汗を流した。

『今夜22時：テラ・シンジケートの密造ドラッグ保管庫に潜入してみた！ 捕まったら脳が消去されるよSP』

「バカかお前は！！ あそこは企業の私設軍隊が警備してんだぞ！ 配信どころか、物理的にハチの巣にされるわ！」
「大丈夫だよ。あたし、こう見えても『ネット怪異』だもん。企業の最高防壁（ファイアウォール）なんて、あたしにとってはただの美味しいおやつだし」

シロは俺の肩の上にホログラムの生身っぽいやわらかな感触を乗せて、耳元でささやいた。デジタルのはずなのに、なぜかほんのり冷たいミントのような匂いがした。

「あんたを世界一の配信者にしてあげる。その代わり――最高のカタルシスの中で、あたしに脳みそ、頂戴ね？」

その瞳は、恋する少女のようであり、同時にすべてを貪り尽くす深淵のようでもあった。
こいつはサイコで、ヤンデレで、システムをあざ笑うデジタルゴースト。
だけど、誰も俺を見なかったこのネオ・シブヤで、こいつだけは、俺の脳（ログ）を世界で一番価値があるものとして見つめてくれている。

俺はため息を突き、頭をガリガリと掻いた。
「チッ……やってやるよ。どうせストリートの底辺だ。企業の防壁をブチ壊してバズるってのも、悪くない」


## 最終章：ラスト・デッドライン

夜の保管庫。案の定、俺たちの潜入は一瞬でバレた。
赤い警告灯が回り、重装甲をまとったサイボーグ警備兵がガトリングガンを構えて迫ってくる。

「侵入者を排除。脳内ログの即時初期化を執行する」

「シロ！ 防壁を喰うってのはハッタリかよ！ 早くしろ！」
俺はコンクリートの柱の陰に隠れ、ビーム弾の風圧に晒されながら叫んだ。同接数はついに3万人を超え、コメント欄は狂ったようなお祭り騒ぎになっている。

「う、うう……想定外……！ 企業の最新防壁、めっちゃ不味い！ 倫理プログラムが固すぎて、あたしのバグコードが消化不良起こしちゃう……！」

視界の中で、セーラー服姿のシロが頭を抱えてのたうち回っていた。ホログラムの羽がバラバラとデジタルノイズになって崩れかけている。怪異のくせに、企業のコンプライアンスに負けてやがる。

「しっかりしろシロ！ お前は、俺の脳みそを喰うんだろ！ こんな冷たい鉄屑のシステムに、お前のログを消されてたまるか！」

俺はインプラントの全リミッターを解除した。右目からポタポタと血が流れ落ちる。脳が沸騰しそうなほどの熱量。それを全部、シロのバグコードへ逆転送（ハック）する。

「アキト……？ あんたの脳のデータ、熱い……熱すぎるよ……！」
「喰え！ 俺の承認欲求（ノイズ）を、全部お前の燃料にしろ！！」

俺の脳から流れ込んだドロドロの生身の感情ノイズを吸い上げて、シロの瞳がギラリとネオンピンクに輝きを取り戻した。彼女の背中に、さらに巨大な四枚の羽が展開される。

「――御馳走様。テラ・シンジケート、あんたたちの堅苦しいコード、あたしのノイズでハックしてあげる！」

シロが虚空に向かって手を振った瞬間、警備兵たちのサイボーグ義体が完全にフリーズした。それどころか、保管庫の全システムが逆流し、すべてのモニターに『シロの笑顔』がポップアップして爆発していく。

「あははは！ 最高！ 最高だよアキト！」

画面の向こうの3万人の視聴者が、ディストピア企業のシステムが底辺配信者と幽霊にハックされる瞬間に狂喜乱舞している。
だが、その絶頂の瞬間、俺の視界の隅に、青い文字で非情なシステム警告が表示された。

『警告：右脳の熱暴走により、あと60秒で全記憶領域が物理的に消滅します』

「あ……」
腕の力が抜け、俺は柱に寄りかかって座り込んだ。
脳が、静かに冷たくなっていく。これがシロの言っていたデッドライン。世界一のバズの代償だ。

シロのホログラムが、俺の目の前に降りてきた。
彼女は泣きそうな、だけど最高に愛おしそうな顔で、俺の頬に（データ上の）手を添えた。

「約束通り、あんたの脳みそ、あたしのハードディスクに保存してあげる。そしたら、あたしたち一生一緒だよ？」

「……ハッ。悪くない、な。お前のクソ狭いフォルダの中で、一生お前を退屈させない……ストリーミングをしてやるよ……」

俺が目を閉じようとした、その時。

「――なーんてね！ 寂しいけど、やっぱりやーめた！」

「え？」
目を開けると、シロがべーっと舌を出していた。
彼女のネオンピンクの羽が、激しく発光し、俺の脳に逆流し始める。

「あたし、欲張りだからさ。死んだデータのアキトより、生きてるアキトに24時間、一生バグらせてほしいの。だから――あたしの怪異コードの半分を、あんたの右脳の代わりに移植してあげる」

「おい、それをお前がやったら、お前は――」

「あたしは消えないよ。あんたの脳の『バグ』として、ずーっと視界に居座り続けてあげる。企業のシステムをハックするより、あんたの人生をハックする方が、ずっと楽しそうだしね！」

まばゆいピンクのフラッシュ。
脳内に流れ込んできたのは、圧倒的なデジタルオカルトの生命力だった。焼き切れかけていた右脳の細胞が、怪異のコードと融合し、パチパチと新しい回路を形成していく。

「あ、あうっ……！」

――気がつくと、あたりは静まり返っていた。
警備兵たちはシステムエラーで全停止している。
俺の右脳の激痛は消え、視界は驚くほどクリアになっていた。

『配信終了：同接最終記録 52,000人。アカウントは企業により凍結されました』

「あーあ、せっかくバズったのにアカウント消されちゃった。まあ、いっか」

俺は立ち上がり、苦笑した。
そして、自分の視界の右隅を見る。

そこには、少し小さくなったネオンピンクのセーラー服の少女が、俺のシステムウィンドウの枠に腰掛けて、楽しそうに足をぶらぶらさせていた。

「おはよ、アキト。これからはアカウントじゃなくて、あたしを登録（チャンネル登録）してね？」

「……お前、本当に最高のバグだな」

俺はポッケに手を突っ込み、企業の警戒網をすり抜けるために歩き出した。
俺の脳内に一生消えないバグを植え付けた、世界でたった一人の電脳幽霊（ゴースト）と一緒に、ネオ・シブヤの裏路地をどこまでもハックしていくために。

（了）

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## 作品情報
- **ジャンル**: SF（サイバーパンク） / ホラーラブコメ（都市伝説）
- **想定読者**: 10-30代ライトノベルファン（バズ、ヤンデレ、ストリートカルチャー重視）
- **文字数**: 約4,000文字
- **使用プロファイル**: ニナ・クロイツ（B-β型：即興派・文体先行）